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播州三木鉋鍛冶三代目
鍛冶銘 鉄心斎芳楽



鍛冶屋が集めた鉄の古道具
木挽き道具

 15 山田春吉の斧
   
 この斧は刃幅145mmで縦40mmの普通形の斧です。あまり古そうには見えませんが和鉄に玉鋼を割り込んだ斧です。野鍛冶 が作った斧だと思います。斧には山田春吉と銘切りがされていますが、これは斧を買った人の名前だろう。玉鋼の部分がもう少なくなっていますが質のいい玉鋼の様に見えます。 以前斧を使う仕事の人が私の鉄の古道具のホームページを見たのだろう、使っている斧を見せに持って来てくれました。 5・6本あった斧の内半分位が玉鋼で出来ていました。 その人の言う事「玉鋼の斧の中に飛び切り切れる斧があります。そのため玉鋼の斧を探しに行きます」と。 この斧がそれほど切れるかどうか分かりませんが。
 14 中屋金次郎作の手曲がり鋸
   
 刃部の長さが56cm先幅が16cmで全長が92cmの大きな手曲がり鋸ですが薄い作りです。 銘は中屋金次郎とあり、横に読み難いですが最上住と銘切りしてあります。 会津の中屋鋸鍛冶に繋がる人が最上に住んで作った鋸だろうか。 この鋸を見た時現代鋼製だと思いました。 玉疵の無いきれいな肌で、大きい鋸だが大工鋸のように薄く作られているからです。 鉄の味がいいので良く見ると端の方に小さい玉疵がある。それで研磨して調べると玉鋼だと分かりました。 表面に鎚跡が残っていますが、大きい鋸をこれだけ薄く玉疵を出さずに作るのはかなり難しいと思います。
 13 雁金屋平右衛門作の手曲がり鋸
   
 古くて大きな手曲がり鋸です。刃部の長さが59cm首の部分が56cm幅が11cmで 全長が130cmもある長い手曲がり鋸です。 京堀川と刻印があり裏には分かり難いが平右門と銘があります。するとこの鋸は「近江甲賀の前挽鋸」に載っている 嘉永四年商人買物独案内の京都堀川二条上ル町雁金屋平右衛門の作った物だろうか。雁金屋平右絵門は前挽鋸鍛冶だが手曲がり鋸も作っていたのだろう。 玉鋼の質も良く赤黒い鉄錆色は光沢も良くいい古道具です。しかしこんな首の長い横挽き鋸は何を切るのに使ったのだろう。
 12 はつり斧
   
 このはつり斧は刃渡り23cm・長さ41cmで重さ3,1kgもある 重く大きなハツリ用の斧です。銘は更音寅弘と切られていて、材質は残念ながら現代鉄に現代鋼で作られています。 使い方ははつる木の上に乗り、長い柄を時計の振り子の様に振って木の側面をはつります。 斧の軸が細いと思いますが、はつる木が少ないのでこれで強度はあるのだろう。しかし更音とは風雅な銘だ。 この道具は大工さんが大きな梁を加工する時に使ったものだろう。 しかし杣仕事に使ったものかもしれず、そこまで分かりません。
 11 首長前挽
   
 この首長前挽は全長54cm・刃部の長さが94cmで柄はありません。 玉鋼で出来ていてかなり古いものだろう錆びて薄くなっている。 背のカーブが滑らかではないので普通の前挽に首を鍛接して長くしたのかもしれない。 木挽さんが幅の広い板を挽く時鍛冶屋に頼んで改造してもらう事もあった様だから。 銘は無く誰が作ったものか分かりません。 屋久島の上屋久町歴史民俗資料館ではこの形の鋸をワキノコと表示してありました。 地方により名も違う様です
 10 手曲鋸
   
 この手曲鋸は全長84cmで刃部の長さが53cmです。この鋸は玉鋼で出来ていて普通の手曲鋸より 厚く歯の厚みは2mmあります。銘も刻印も無く作者は分かりません。 この鋸の玉鋼の質はあまりいいものではありません。しかし玉鋼の鋸の組織は荒くてもいい様です、 それは先の組織が次々に欠けてゆき新しく角が出てくるのでよく切れる。と私は思うのですが。
 9 鋲留の前挽き鋸
   

この前挽き鋸は全長82cmで歯部の長さが54cmです。銘は無く歯部の玉鋼と背部の和鉄は鍛接ではなく鋲でかしめて作られています。表面の作りも鎚だけの仕上げではなく削って丁寧です。鋸研究家吉川金次さんの「鋸」の本によると、鋲でかしめて作る前挽き鋸は鍛接した前挽き鋸よりも古い時代の作り方だそうです。この型の前挽き鋸は東北地方によく残っているそうです。しかし、この前挽き鋸は形も特別古いとは思えず表面も削って仕上げてあり、そんなに古いと思えませんが、それでも玉鋼と和鉄で作られていて明治中頃以前の前挽きだろう。珍しい作りの前挽き鋸です。

 8 手曲鋸(天王寺鋸)
   
 この手曲鋸は全長106cm幅10,5cmの丸太を切る横挽き鋸です。刃渡り1尺8寸の大きな鋸です。残念ながら現代鋼製で銘は無し。首の所に継いだ跡があります。三木ではこの形の鋸を手曲鋸といいますが「会津の鋸鍛冶」の本では天王寺鋸と載っています。

 天王寺鋸の名の由来は、江戸時代に大阪の天王寺の鋸鍛冶が新しく柄の曲がった鋸を作りました。その家へ泥棒が入り取る物が無かったのでその鋸を盗んで帰り捕まりました。盗人の話からその鍛冶屋が奉行所に呼び出され、その鋸の名を聞かれ仕方なく住んでいる地名の天王寺鋸と答えそれがこの鋸の名前になったそうです。  土佐や三木・会津で多く作られ北海道向けに2尺の大きな物も作られたそうです。

 7 雁金屋七郎右門の前挽鋸  (百舌の前挽鋸)
   
 この前挽鋸は平成15年の夏に友達と四国の剣山に登りに行った時、うだつで有名な脇町を散策した時に、通りにあった古道具屋で見つけた鋸です。

 前挽鋸が7・8枚ありましたが玉鋼で出来た一番古そうなこれを買いました。帰ってから銘を見ると百舌とあったので、村松貞次郎さんの「道具曼荼羅」の一番最初に載っている「百舌のノコギリ」を見るとそっくりだ。下の刻印もそっくりだ。 村松さんが買ったのは四国の香川県の高松、私が買ったのは徳島県脇町、そんなに離れていない。するとこれは四国の鍛冶屋が作った物だろう。こんな偶然があるものだ。 この百舌の前挽鋸に関して東京農業大学の星野欣也さんから指摘がありました。百舌とは村松貞次郎さんが読んだのですが、これは七郎右門の七ろ右門をくずしたものですと。なるほどと納得できます。七郎右門とは天保四年の「商人買物獨案内」の載っている、京都丸太町油小路東入の前挽鍛冶雁金屋七郎右衛門の事です。この前挽鋸はやはり江戸時代終わり頃に作られた古い鋸だったのだ。

 6 斧2
   
 この斧は縦170mm横53mm最大厚み36mmの普通形の斧です。両方に3本と4本の線が入っていて、○の中にセの小さな刻印が打ってあります。

材料は和鉄に現代鋼の割り込みでそんなに古い物ではないだろう。この3本と4本の線は「身を避ける」の意味だと思っていました。ところが法隆寺大工の西岡さんの本によると、3本の線はミキ・御酒を表し4本の線はヨキ・四大「地水火風」を表しています。地は地面、水は水、火は太陽、風は空気で四方山(よもやま)の山海の珍味・五穀の事です。この線を入れた斧で木を切る前にその木にもたせかけて、山の神様に木を切らしてもらいますと拝みます。その時本来ならお酒や五穀をお供えするのでしょうが山の中ですから、こういう形で斧の刃に線を彫ったらしい。

 5 木回し
   
 この古道具は15・6年前友人の大原君にもらった物。この道具を三木の金物資料館へ寄付をするというので付いて行ったが、事務員さんが「分かりません」だけで受け取るとも言わず。それで私の所にあります。  何に使う道具か分かりませんでしたが、少し前に最後の江戸木挽き職人「林以一」さんの「木を読む」と言う本を読んでいたら、木回しと言う大きな丸太を転がす道具だと分かりました。  鉄は現代鋼製ながら坂本と鍛冶屋の銘が切ってあります。
 4 斧
   
 この斧は縦19cm横10cmの和鋼和鉄製です。形は普通の長方形の斧と違って細くそして地肌もごつごつとした変わった斧です。

 普通「身を避ける」と両側に3本と4本の線を入れますが、この斧は3本づつ深くタガネを入れている。  鍛冶屋がデザインにこだわって作った斧のようで、武骨でスマートな感じをうけます。

 3 前挽鋸2
   
 この前挽き鋸はかなり以前波賀町のドライブインで買った物。和鋼和鉄製で形からしてかなり古い物だ。 刻印は二つ打ってあるが読めなく銘は無い。ほとんど鍛造の鎚で仕上げて鋼の部分は?で仕上げてある。  鋼の部分の幅は狭くよく使用された物だろう。

 前挽き鋸はまだ玉鋼製が残っているようだ。

 2 鳶口
   
 この二つの鳶口は左が現代鋼製薄く鍛接も悪くいい物ではない。もう一つは長さ13cmの和鋼和鉄製厚みがあり鍛接も良くいい形をしている。口先は玉鋼製で刀の様な刃紋が出ている。かなり古いいい鉄味の古道具だ。
 1 前挽鋸
   
 この前挽鋸は何処で購入したか忘れてしまったが、桐の柄の玉鋼製かなり古い物だろう。刃渡りは53cmよく使い込まれて鋼の部分が少なくなっている。銘は「□右門」とあり裏側に「かぢ町」の刻印がある。「今右門?」と読むのだろうか。 この銘も村松貞次郎さんの古道具を集めた道具曼荼羅に載っている、百舌のノコギリの銘に似ているが、私は違うと思うがどうでしょうか。少し錆びているがいい鉄の色をしている。

この前挽鋸の銘は二右門という銘で甲賀で作られた鋸ではないかと、ホームページを見た人から指摘がありました。その様にも読めます。しかし「近江甲賀の前挽鋸」の本の明治35年の前挽鋸製造業組合のページを見ると、この銘は森島岩蔵さんの銘によく似ています。ひらがなの「う」と「右」で岩と読ませる様です。利田仁右衛門さんの銘が二右門ですが数字の二がはっきりとした二の字に切っています。しかしこの前挽鋸は玉鋼製で「かぢ町」の刻印がある。森島岩蔵さんは玉鋼で前挽鋸を作っていない様だし、甲賀町にはかぢ町という町はない。結局作者は分からない。

 

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