播州三木鉋鍛冶三代目
鍛冶銘 鉄心斎芳楽
昔 の 鉋 の 作 り 方
明治おわりから昭和の初め頃の鉋の製造工程です。その頃は機械ハンマーや研磨砥石が無く鎚と鑢(ヤスリ)やセンを使って全て手作業で鉋を作っていました。原材料の鉄と鋼はほぼ使える状態で入って来ました。 私はこの様な作業で鉋を作った事はありませんが、親や先輩から聞き調べた事を順次載せてゆきます.
1 鋼作り |
2 鍛接 |
3 火造り |
4 焼き鈍し |
5 鋼直し |
6 裏削り |
7 鎚目入れ |
8 生ならし |
9 成形 |
10 生研ぎ |
11 刻印打ち |
12 焼き入れ |
13 焼き戻し |
14 焼き研ぎ |
15 木砥当て |
16 刃研ぎ |
1鋼作り (明治初期以前は鍛え鍛冶参照) 鋼を鍛接出来る状態にする作業 |
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1 鋼の鍛造 厚板の鋼を使う場合は、横座が鋼を火窪で加熱し金床の上で先手二人の大槌で鍛接する厚さに伸ばしていく。炭の大きさは鋼作り・鍛接・火造りの作業には親指の大きさに割って使用する。 |
2 鋼割り 鋼を色がつかない程度に加熱し先手の大槌で鏨(タガネ)を軽く打って鋼の板を所定の寸法にタガネ傷を入れそれを割って鉋一枚分の鋼にする。 |
2鍛接 | ||
1 シキ作り 横座が火窪に地鉄を入れ鞴を使って加熱し鍛造温度になると引き出す。それを先手の大槌で叩いて、刃先の方を薄く頭の方を厚く鋼をのせる所定の寸法に鍛造する。 シキの出来た地鉄の上に接合剤をつけた鋼をのせて火窪に入れて加熱する。 |
2 ノタ打ち 鍛接温度になると金床の上へ出し横座が小槌で鋼を叩いて叩いて仮付けをする。 |
3 鍛接 ノタ打ちをすると時間もかかり温度が下がるのでもう一度火窪で加熱する。 鍛接温度になると金床の上で先手の大槌で鍛接する。鋼から裏上面まで鍛造したあと鉋を所定の長さにタガネを使って切断する。 |
3火造り 鉋の形に鍛造する作業 |
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1 鉋上面の火造り 火窪で鉋の頭部を火花が散るまで加熱し火窪から出し火造り箸で掴み小槌で頭を叩いて頭の形を造る。 その後先手の大槌で裏と甲を鍛造して鉋上面の形を作る。 |
2 小均し 鋼を約900度位の温度に加熱してから先手の大槌で鋼の部分を鍛造し反対側の甲からも水打ちしながら鍛造する。そして鉋のヌケとオチを作りながら鉋の形を作っていく。 |
3 先払い 鉋の形が出来ると最後に落とし台の上に鉋の刃先をのせ、その上に落としタガネを落とし台と挟み込むようにのせて大槌で叩いて鉋の刃先を切断する。 |
4焼き鈍し 鋼の組織を調整し加工しやすくする作業 |
火造りの終わった鉋を火窪で焼入れ温度より少し低い温度に加熱した藁灰中で徐冷する。 鋼の組織の球状化と軟化を目指す。 |
5鋼直し 鋼の厚みを一定にする作業 |
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鍛接・火作り作業で生じた鋼の厚みの乱れを直すため、セン床台の横に木の棒を使って足で固定する。鋼の厚みが見えるように鑢で鉋の刃先を削る。 | セン床台の上に鉋を指で固定し、鋼の厚い部分は多く薄い部分は少なく削り厚みを一定にする。削る量が多いところはセンで削る。 |
6裏削り 裏の表面を削る作業 |
昭和20年代は削る前に鉋の表面の酸化皮膜をを塩酸か硫酸で取っていた。 その後セン床台の上に木の棒で固定し裏をセンでベト穴が残らないように削っていく。 太平洋戦争以前は荒い砥石で裏の酸化皮膜を取ってからセンで削ったと思います。 鉋刃の意匠によっては裏上面を鍛造地のまま残す事もあります。 |
7鎚目入れ 裏上面に模様を入れる作業 |
鎚の叩く面にタガネなどで模様を入れた鎚目鎚で均し金床の上で裏上面を叩いて模様を入れる。 センを使ってセン目を入れることもあります。鎚目を入れずにセンで削ったまま仕上げる事をスキナラシといいます。 |
8生均し 裏の部分を浅い曲面にする作業 |
浅い凸面に作った均し金床の上に裏の鋼の部分を置き、甲の方から鎚で叩き裏を浅い凹面にする。 その後木床でコゴミ・裏の深さ・歪を取る。 |
9成形 鉋の形を作る作業 |
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1 側と刃先の成形 鉋をセン床台に木の棒と足を使ってで固定し側を鑢で削る。削る量が多いとセンを使う事もありました。 両方の側を削り鉋の幅を所定の寸法に仕上げる。そして刃先を歪まない様に削る。 |
2 頭の成形 セン床台の横に打ち込んだ鉄に鉋を足で固定し鑢で鉋の頭を削る。 |
3 甲の成形 木の棒を使ってセン床台に鉋を固定し、センを使って甲を削りヌケとオチを作る。仕上げに頭と側に出たバリを鑢で削り取る。 |
10生研ぎ 焼き入れ時鋼に塗った泥を落ちにくくする作業 |
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研ぎ場の台の上にマクリと呼ばれる荒砥石を置き木の棒と足で固定する。 鉋も裏を上にして研ぎ板に固定し裏をマクリに押し当て前後に動かして裏を研いでいく。水をかけながら裏全体に砥石の目ををつける。 |
11刻印打ち 鉋の銘や刻印を打つ作業 |
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刻印の代わりにタガネで銘切りすることもあります。 |
12焼き入れ 鉋で一番重要な硬さを出す作業 |
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泥塗り 準備作業として鉋の甲と側に砥の粉を水で練ったものを塗り、裏の鋼の部分にはメスキと呼ばれる砥石の泥を均一に塗り乾燥させる。 |
焼き入れ 小指の先程度の大きさに割った炭を火窪で加熱し焼入れ箸の先も加熱しておく。加熱できた焼き入れ箸で鉋の頭を掴み火窪に入れる。頭のほうから加熱し焼入れ温度になったら保持時間を取った後水中で急冷する。 その後焼き入れで生じた歪やコゴミを取る。 |
13焼き戻し 鋼に粘りを持たせる作業 |
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鉋刃を炭火の上であぶり水を落とすと湯玉になるくらいの温度にする。 その後仕上げの歪取りをする。 |
14焼き研ぎ 裏の部分を研ぐ作業 |
研ぎ場に固定したマクリと呼ばれる荒砥石に、研ぎ板で固定した鉋の裏の鋼部分を押し当て、焼入れ時にできた表面の酸化皮膜を削り落としていく。 |
15木砥当て 焼き研ぎした部分を磨き艶を出す作業 |
厚み4cmくらいの杉板を浅い円弧状に削って作った木砥を研ぎ場に固定する。その上に水をかけて金剛砂を置き研ぎ板に固定した鉋を押し当て磨いていく。 |
16刃研ぎ 刃を付ける作業 |
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荒刃研ぎ 鉋をセン床台に木の棒を使って固定し、刃先の地鉄をセンで削り取る。 |
裏出し 荒刃取りをした鉋刃を裏出し金床の上で裏出し用の鎚を使って裏出しをする。そして裏出しした面を平面にかつ刃先を真っ直ぐにのせる。 |
刃研ぎ メスキと呼ばれる荒砥石で鋼の部分を研いでいく。 鍛冶屋の刃研ぎは完全に刃を付けず角刃もも取りません。 |
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