鍛冶屋のつれづれ書き

三 木 金 物 神 社

 

 

                                       鎮座地  三木市上の丸町五番

祭神

  鍛冶の神である天目一箇命(あまのまひとつのみこと)

  製鋼の神である金山毘古命(かなやまひこのみこと)

  鋳物の神である伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)

由緒

西脇市大木町に天目一神社があります。鍛冶屋の神様天目一命を祀る神社ですが大正十二年に創建されています。平安時代の九百二十七年に

出来た「延喜式」に多可郡の天目一神社が載っています。しかし何時の時代かに消えています。明治になり延喜式内社の関心が高まり、

所在地の分からない天目一神社については多可郡内の数か村の神社が名乗りを上げました。

その時著名な学者が式内社天目一神社の所在地を大木町に推定し、多可神職会もこの説を支持しました。地元大木町は惣堂天王社のあったこの地を

天目一神社と定めて復興を計画し、地元や播州・泉州の金物業者の援助を得て大正八年に着工し大正十二年に竣工しました。

この時三木の商工業者も寄付をしています。三木の組合として鋸目立て組合と金床組合が協力しています。(天目一神社案内より)

 

       初めの金物神社                      台風で倒壊した後の仮神殿  (写真集 明治・大正・昭和 三木)

三木には以前から上の丸の稲荷神社が鍛冶屋に尊崇されていて、十二月八日の鞴祭りの日には朝暗いうちから鍛冶屋のお参りがあり賑わっていました。

三木にも鍛冶屋の神である天目一命を祀る神社を作ろうと気運が高まり、大木町の天目一神社から分祀して昭和十年に三木金物神社が創建されました。

祭神は鍛冶の神である天目一箇命(あまのまひとつのみこと)と製鋼の神である金山毘古命(かなやまひこのみこと)と鋳物の神である

伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)の三神が合祀されています。

しかし昭和三十九年に台風により社殿が倒壊してしまった。その後瓦製の仮神殿が祭られていたが、昭和五十年十二月に市内の多数の商工業者の寄付により

現在の社殿に新しく建て代えられたものです。その時境内も広げられ現在の姿になりました。

 

狛犬と鳥居

  

狛犬は金物問屋だった武原治良兵衛さんが、この神社が創建された昭和十年に奉納されています。

鳥居も同じ年に地球ライオンショベル会社が奉納されています。

周りの玉垣の西側と北側には寄付をした人と事業所の名前がまだ残っています。

 

手水鉢

 

 

 手水鉢そのものは昭和九年金物神社が出来た時に鉄鋼商前田小平さんと前田庄一さんによって寄付をされています。

今の建物の形になったのは商工業者の寄付により昭和四十年四月の三木金物神社拡張整備工事によりなりました。

 

 古式鍛錬場

 

        現在の古式店錬場                以前の古式鍛錬場

 現在の古式鍛錬場は平成元年に少し大きく建て替えられました。その年の鞴祭りの火入れ式にに鋸部会の光川忠雄さんが

御番鍛冶師として鋸の古式鍛錬を奉納しています。それから月一回の古式鍛錬の練習と年一回の火入れ式に古式鍛錬場として使われています。

以前の古式鍛錬場は昭和四十年に建てられていますから、現在の鍛錬場は三代目になります。

 鞴祭り

  

          鞴祭りの祭典                         鉋の火入れ式

 全国的にいうと元々は十二月八日に行われていて鍛冶屋・鋳物師・刀工など鞴を使う業種の人達の祭りです。三木金物神社では現在は

十一月最初の土曜日に三木の鍛冶屋の安全と三木金物の発展を祈って祭典が執り行われます。昭和二十三年には金物神社前に古式鍛錬場が作られ

鞴祭りの日に火入れ式という行事が始まりました。これは三木で作られる鋸・鑿・鉋・鏝・小刀の鍛冶屋の中で技量人格共に優れた人が、

御番鍛冶師として古式によるそれぞれの鍛錬作業を神様に奉納する行事です。

昭和二十三年の最初の火入れ式には鋸鍛冶の吉永清太郎さんと鑿鍛冶の鈴木周一郎さんが御番鍛冶師として古式鍛錬を奉納されています。

この行事は今も続いており、金物神社の鞴祭りの祭典が執り行われてた後火入れ式が行われます。現在は鋸・鑿・鉋・鏝・小刀の製造方法も

昔と変わってきて、火入れ式で行う古式鍛錬の様な形でそれぞれの道具を作っている事業所はありません。機械ハンマーや研磨砥石を使って作るのが普通です。

火入れ式という行事を続けるために、三木金物古式鍛錬技術保存会があります。毎月第一日曜日は同じ古式鍛錬場で各五部会が古式鍛錬を公開しています。

これは火入れ式の御番鍛冶師を養成するためにしている行事です。火入れ式で古式鍛錬を奉納するために、古式鍛錬技術保存会の会員である

三木工業共同組合の鋸・鑿・鉋・鏝・小刀の各部会が技術を伝えるため努力をしています。

三木金物神社の鞴祭りの火入れ式は、民俗鍛冶技術の継承という意味もあり全国的にみても貴重な珍しい行事だといえます。

  金物神社の修理

 

 平成元年の秋頃から金物神社本殿の修理が行われました。本殿の屋根を飾る千木が長い面月の風で飛ばされなくなっていたので新調しました。
それから正面扉の木の板を削り金具を新調し新品の様になっています。他に正面の木具を新調し周りを塗り替えています。
そして令和元年の鞴祭りは新しくなった本殿前で行われました。

 金物神社御番鍛冶師

  昭和23年度 鋸   吉永清太郎    藤原鶴蔵     古川 治 

         鑿   鈴木用郎    西田利市     山本岩市 

昭和24年度 鋸   赤松幾三郎    津村米蔵     中村幸治

       鉋   神吉代一郎    神吉義輝     神吉清治 

昭和25年度 刃物(釿)永井丈太郎   河合敬三     藤原千蔵

       鋸   池町伊之助    山田音市     前川明

昭和26年度 鋸   小山鶴吉     小山甲一     長谷川吉光

           ギムネ 藤田徳市     横山儀一

昭和27年度 鋸   白髭麻一     吉永安雄     安藤利

       小刀  寺口市松     出雲正信

昭和28年度 鋸   喜多鶴太郎    神沢康介     入舟勇治    岡本太三郎  

          鏝   富樫弥三郎    富樫貞治     富樫正吉

昭和29年度 鋸   藤本島吉     神行庄司     小林克己

         鑿   小山俊二     和田又次郎    宮脇虎一

  昭和30年度 鉋   井村松治     田中正一郎    武田秀市

         鋸   岩井清      岩崎吉行     古谷信男

  昭和31年度 鉋   片嶋久一     上山武夫     二杉広行

         鋸   前田長一郎    前田順蔵     前田義則

  昭和31年度 ナイフ 永尾三次     井上作雄     川合一三

         鋸   神戸光雄     神戸正夫     長谷川剛

   昭和32年度 刃物(銑)河合敬三     河合昭三     清瀬正一

   昭和33年度 鋸   神沢康介      神戸光雄     大林嘉蔵

        ギムネ  岡島芳和     岡島貞二

  昭和34年度 鉋   神吉義良     神吉岩雄

昭和35年度 鋸   神戸光雄     仲真治      神沢義次

                  鑿   岩崎宣次     稲岡政治     横谷光雄

昭和36年度 鋸   井沢覚      井上金蔵     山本静雄

         鉋   武田秀市     二杉広行     今井利一

昭和37年度 鋸   正井甚兵衛    横田幸雄     神行性次

      ギムネ  国定留吉     片岡今市

昭和38年度 鋸   岩井将雄     阿随一二     堀尾生一

       鏝   小坂宇市     小坂智一     国井繁治

昭和39年度 鋸   井上金蔵     大西竹夫     上原秀夫

       鑿   宮脇虎一     小山勝      西田清二

昭和40年度 鋸   井上増治     生田 松     戸川音吉

       鉋   広田長治     山本勝三     今井重信

昭和41年度 鏝   梶原重次     梶原薫      梶原美能留

昭和42年度 鋸   横山一夫     森永茂      藤原林

昭和43年度 刃物(鋏)向山秀夫     向山秀一     古西正男

昭和44年度 鋸   近藤三郎     近藤富幸     神沢忠一

昭和45年度 ギムネ 横山利夫     横山輝人

昭和46年度 鋸   光川忠雄     河合 成     矢野正信

昭和47年度 鑿   宮脇新一     大内光明     森本知男

昭和48年度 鋸   小山巽      小山武夫     吉田昭五

  昭和49年度 鉋   田中正一郎    片嶋圭三     横山勉

昭和50年度 鋸   清水伴次     清水清治     清水亀治

昭和51年度 鏝   小坂修      小坂基康     有江四郎

  昭和52年度 鋸   森本光治     金口昭二     藤本昭

昭和53年度 鑿   高橋俊夫     高橋和己     高橋昌巳

  昭和54年度 鋸   神沢政夫     神沢基夫     宮脇正夫

昭和55年度 鉋   今井利一     宮本雅夫     山口房一

昭和56年度 鋸   筒路豊      近藤義明     岡部義貞

  昭和57年度 鏝   吉本喜重     西馬義輝         五百蔵修

昭和58年度 鋸   井之上博夫    奥野一雄     清瀬薫

昭和59年度 鑿   川井基弘     小谷重博     筒井俊一

昭和60年度 鋸   神沢基夫     近藤三郎     近藤八郎

  昭和61年度 鉋   山本勝三     宮本雅夫     山口房一     

  昭和62年度 鋸   岡部義定     筒路豊      井之上博夫

  昭和63年度 中止

  平成元年4月16日 新古式鍛練場落成式

         鋸   光川忠雄     井之上博夫    広田精一

平成元年度  鑿   大内光明     岩崎照美     平田三郎

      小刀   長池俊次     西口良次     池内昭三

平成2年度  鏝   公森和嗣     竹中保男     杉田隆三

  平成3年度  鉋   今井重信     横山邦男     山本芳博

平成4年度  鋸   池町善臣     堀尾生一     仲一真     池町恵介

  平成5年度  鑿   高橋和己     宮脇正孝     高田良作    五百蔵昇

   平成6年度 小刀   西口良次     出雲多喜男    長池廣行

  平成7年度  鏝   安随俊明     竹中保男     杉田隆三

平成8年度  鉋   宮本雅夫     山本芳博     横山邦男  

  平成9年度  鋸   近藤義明     岡部義定     仲一真     神沢浩三

  平成10年度 鑿   宮脇正孝     高橋亮一     高田良作

  平成11年度 小刀  藤原好輝     池内和明     池内久徳

  平成12年度 鏝   藤原道雄     川井正男     二杉広顕    藤原守人

  平成13年度 鉋   千代鶴貞秀    山本芳博     横山邦男    前田昭

平成14年度 鋸   廣田精一     仲一真      光川大造    神沢俊作

平成15年度 鑿   高橋亮一     柴野髙夫     宮永晃     高芝道博

平成16年度 小刀  池内和明     池内広和     長池勝寛

  平成17年度 鏝   杉田隆三     横山真治     佐藤善貞    梶原直樹

平成18年度 鉋   山本芳博     前田昭      田中康嗣    森田直樹

平成19年度 鋸   仲一真      神沢俊作     前田敏克    池町恵介

平成20年度 鑿   高田良作     高橋典三     五百蔵秀夫   小山勝美

平成21年度 小刀  藤原保彦     君塚善夫     生友幾夫    

平成22年度 鏝   別井正男     五百蔵満男    宮本博文    宮脇正利

平成23年度 鉋   前田昭      森田直樹     魚住徹     山本健介 

平成24年度 鋸   神沢俊作     光川大造     岡田文夫    廣田一成

平成25年度 鑿   柴野高夫     小山勝美     磯野耕吉    高橋資

平成26年度 小刀  西口良次     田中誠貴     宮脇大和

  平成27年度 鏝   西尾義明     佐藤義貞     佐武幸吉    二杉広顕

    平成28年度 鉋   魚住徹      森田直樹     野々村俊一   内橋圭介

  平成29年度 鋸   前田敏克     芦原強      廣田一成    河原秀行

平成30年度 鑿   小山勝美     高田賢一     大内俊朗    五百蔵秀夫

令和元年度  小刀  君塚義夫     永安真      永尾光雄

令和2年度  鏝   梶原直樹     岸井信喜     成瀬豊彦    杉田智彦

令和3年度  鉋   森田直樹     山本健介     内橋圭介    野々村俊一